「なぜこの自治体なのですか」に、どう答えるか。
公務員面接の「なぜこの自治体なのですか」は、面接カードの段階から問われています。受験者数や総務省の指針からこの質問の背景を確かめ、総合計画や予算、統計を使った自治体研究を、自分の経験と結んで答える手順を整理します。

「なぜ、この市を志望したのですか」。面接カードに書いた志望動機を話すと、「それは隣の市でもできますよね」と返ってくることがあります。
ここで詰まるのは、たいてい、受験先のことを具体的に調べていないからです。調べる材料は、自治体のサイトにほとんどそろっています。地方公務員の面接を受ける人に向けて、何を読み、どう答えに入れるかを書きます。
面接カードの設問
2026年度の面接カードやエントリーシートには、こんな設問があります。
- ◦熊本県:「熊本県職員を志望する理由及び受験職種を志望する理由」と、「熊本県が実施している事業で関心がある仕事及びその理由」(熊本県)
- ◦東京都Ⅰ類B(一般方式):「東京都を志望した理由」と、「東京都に採用されたらやってみたいこと」をそれぞれ300字以内(東京都)
- ◦さいたま市の秋試験(高校卒業程度):「さいたま市職員を志望した理由及び職員としてやってみたい仕事」(さいたま市)
神奈川県の松田町は、申込みのときに「町に関する試験等(20分間)」まで行っています(松田町)。
どの設問も、志望する理由と、そこでやりたい仕事を組にして聞いています。欄は東京都でも300字しかありません。書ききれなかった分は、面接で聞かれます。
この質問の背景
総務省の調査では、地方公務員の採用試験(競争試験)の受験者は、2015年度の536,627人から2024年度には388,996人に減りました。競争率は6.6倍から4.1倍に下がっています(総務省)。三重県伊勢市は人材育成・確保基本方針のなかで、採用試験に合格しても国や他の自治体に就職するために辞退する人がいることを、課題として挙げています(伊勢市)。
総務省は2023年12月の指針で、自治体に「求められる職員像の明確化」と、総合計画などの中長期的な計画との連携を求めました。試験の工夫としては、教養試験に代わるSPIなどの適性検査の導入や、人物試験の配点比率の増加を例に挙げています(総務省)。
筆記の比重を下げて人物を重く見るようになり、合格者の辞退にも悩んでいる。そういう自治体が、ここで働く理由を面接で確かめたくなるのは自然だ、と読めます。質問の目的を明言した公的資料は見つからなかったので、ここは推測です。
自治体研究に使う資料
読むものは、だいたい次の四つです。
- ◦総合計画:その自治体が10年後にどうなりたいか。重点分野は何か。自分のやりたい仕事は、どの施策に入るのか
- ◦施政方針と当初予算の概要:今年度、首長が何を優先すると述べ、実際にいくら予算がついたか
- ◦広報紙と議会の会議録:住民にどう伝えているか。議会でどんな指摘が出ているか
- ◦決算カードと国勢調査:財政の規模、人口の増減。ほかの自治体との比較
最初に読むのは総合計画です。総務省の指針は、職員像を中長期の計画と連携させるよう求めています。伊勢市の方針も、総合計画に掲げるまちの将来像を実現するために改定した、と書いています。総合計画を読めば、その自治体がどんな職員を求めているかの見当がつきます。人材育成・確保基本方針を公表している自治体なら、それも読んでください。
島根県松江市の場合、総合計画、令和8年度の市長施政方針、予算の概要、市報の予算特集、会議録の検索まで、市のサイトからたどれました。受験先のサイトでは、「計画」「財政」「市長の部屋」といった欄を探します。
なお、市町村の基本構想は、2011年の地方自治法改正で策定の義務がなくなっています(総務省)。名称も計画期間も自治体ごとに違うので、受験先の現行の計画を確認してください。
数字は、総務省の決算カードが全国で同じ様式なので、隣の自治体と比べるのに使えます。人口の転出入や産業構造は、RESAS(地域経済分析システム)で見られます。登録は要りません。
隣の市との違い
広島市のエントリーシート(就職氷河期世代対象の試験)には、広島市以外の就職試験等の受験状況を書く欄があります(広島市)。併願は聞かれるものとして準備しておきます。
令和7年国勢調査の人口速報では、全国1,719市町村のうち90.6%で人口が減りました(総務省統計局)。「人口減少が課題です」という答えは、ほとんどの自治体に当てはまってしまいます。受験先が人口減少に対して何を優先しているのか、今年の予算で何を始めたのかまで調べてください。隣の市の総合計画も開いて、重点の置き方を見比べると違いが見つかります。
県と市のどちらを選ぶのかを聞かれたら、自分のやりたい仕事が、住民に近い窓口や地域の事業にあるのか、広い範囲の調整にあるのかを、事業名と自分の経験で答えます。制度の一般論を話す必要はありません。
答え方の例
自分の経験、受験先の計画か事業、やりたい仕事の順に話します。たとえば、こうです。
「大学のゼミで、市内の商店街の空き店舗を調査しました。店主の方々に話を聞くなかで、市の創業支援の窓口に相談して開業した方に何人も出会いました。総合計画でも、中心市街地の再生は重点施策のひとつに挙げられています。調査で身につけた、現場で話を聞いて課題を整理する力を、創業支援や商店街の担当として生かしたいと考え、志望しました」
事業名や施策名は、実際に調べたものに置き換えてください。調べたことを全部話すと長くなります。一つに絞り、残りは深掘りされたときに使います。
秋の面接日程
国家一般職の高卒者試験・社会人試験(係員級)は、人物試験が10月14日から23日です(人事院)。特別区のⅢ類は、第2次試験が10月30日と11月2日に予定されています(特別区人事委員会)。9月20日の統一試験日に第1次試験を行った市役所では、10月から11月に面接が来ます。日程は受験先の案内で確認してください。
すでに面接カードを出した人は、書いた施策や事業について、なぜ関心を持ったのか、自分ならどう関わるかを声に出しておきます。来年度に受ける人は、筆記の勉強の合間に、受験先の総合計画を一度読んでおくと、面接カードを書くときに困りません。
SpeakVizでの練習
SpeakVizの公務員面接のプリセット質問には、自治体研究に関わる質問がまとまって入っています。
- ◦なぜこの県(市)を志望しているのですか。自分の住んでいる自治体でないのはなぜですか
- ◦この県(市)の魅力は何だと思いますか
- ◦この県(市)の課題は何だと思いますか
- ◦あなたが気になるこの県(市)の政策や取り組みは何ですか
- ◦この県(市)でやってみたいことは何ですか
質問ごとに、面接官の意図と答え方のヒントが付いています。知事や市長の名前、人口、面積を尋ねる質問もあります。
調べた内容を声に出して答え、文字起こしを読み返します。資料の言葉をそのまま読み上げている箇所や、自分の経験が出てこない箇所が見つかるはずです。直すのは一か所にして、同じ質問にもう一度答えます。
志望理由が言えるようになったら、AI模擬面接で深掘りを受けます。AIは答えに応じて質問を重ねるので、理由を掘り下げられたときに、計画や事業の名前を挙げて答えられるかを試せます。人との模擬面接と組み合わせる方法は、公務員面接は、アプリで反復して人との練習で仕上げるに書きました。
SpeakVizは、自治体の施策や数字が正しいかどうかを判定するものではありません。事実は自治体や国の公開資料で確認し、答えの方向性に迷ったら、大学のキャリアセンターや予備校など、人に見てもらってください。
今日調べたことを一つ、声に出してみてください。